食事場所 

以前、訪問介護の仕事をしていた時に出会った利用者様で
どうしても決まった場所で、立ったままでしか食事をしない方がいらっしゃいました。

その方はご両親が亡くなってから何十年も1人で暮らしてきて
最近認知症の症状が出てきたという事で、食事の支度や掃除、
買い物等のサービスに入らせていただいていました。

長い間1人暮らしのためか部屋の中の家具は少ないのですが、
台所にはテーブルがあるのに、テーブルに食事を並べても必ず台所の隅にある
小さな冷蔵庫の上に自分で運んでいき、立ったまま食事をするのです。

口数の少ない方で、初めてだから人見知りしているのかな、
とその時は思っていたのですが、それから何度通っても必ず
”所定の位置”で食事をしていました。

「立ったままだと疲れるでしょ、椅子に座ってゆっくり食事してください」とか
私が近くに居るから気になるのかと思い、「あちらで洗濯していますから
テーブルでゆっくり食べてください」とか色々声掛けはしてみたのですが、
「はい」と返事は返ってくるのですが、やはり食事は冷蔵庫の上で済ませてしまいます。

そういう日が何日か続き、少し私にも慣れてくれて会話も少しずつ
続くようになったある日、理由を聞いてみることにしました。

すると「ずっと1人だから、部屋の色んなところで食事をしてみたんだけど、
テーブルは広すぎるし、冷蔵庫の上の広さが丁度よくって、
もう何十年も座って食事をした事は無いのよ」と話してくれました。

「ここでないと逆に落ち着かないのよ」と言っていました。

急に1人になって寂しかったのかもしれませんね。

なくて七癖と言いますが、この方のように何十年も習慣になっている食事の仕方を
最後まで変えることはできませんでした。

他人に迷惑をかけているわけではないし、”こうでないといけない”なんて
思い込みは捨てなくてはと思い知らされました。

”行動には理由がある”、自分の常識を人に当てはめる事はできないんですね。


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